富永峻さんのピアノリサイタル@東京オペラシティへ




「今回3曲なんですけど、2部の『展覧会の絵』が、35分あるんですよ」
「え!!!!! あと2か月しかないですけど…」
「あと、2か月もですよ(笑)」

35分の曲は、果たしてどうなるのか?

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 私が恵比寿の改札に入った瞬間、一緒に行く友人から「山手線止まってる」とラインが入りました。山手線で行こうとしていたのですが、急遽埼京線から行くルートに変更。他にお誘いしていたクライアントさんも「山手線止まってる」とラインが入りました。
 つまり同時刻に、私は恵比寿、友人は五反田、クライアントさんは目黒だったのです。私は、5人分のチケットを預かっていたので、もし、その時間に恵比寿にいなかったら、19時15分の開演に間に合わないところでした。そもそも、コーチングセションの日程変更もあって、恵比寿駅構内のカフェでスカイプをすることになったことから始まり、全ての時間調整がうまくいったのだと思います。待ち合わせ場所に既についていた2人には、無事にチケットを渡すことができました。
 山の手線組をギリギリまで待っていましたが、間に合わなかったようなので、チケット受付に預けて席に着きました。席について間もなく開演となり、私もなぜか急に緊張してきました。

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≪第一部≫

Scriabin
エチュード 作品42より
ソナタ第2番「幻想ソナタ」

Ravel
夜のガスパール

 知っている曲を聴くときは、なんとなく自分もメロディーを心の中で奏でながら聴いてしまいますが、知らない曲の場合、何が起きたのかというと、雑念ばかり浮かんでいる自分に早くも気づきました。(笑)今、ブログを書いているこの瞬間には、そのとき何を考えていたのか? 全く覚えていませんが・・・。

 シャボン玉のように、消えては浮かぶ雑念。別に消そうとする必要もなく、そのまま取り扱っていると、そのあとから急に音が身体の中に入っていったのを感じました。そよそよ風が吹いているかのように、さらさら小川が流れているかのように、ときには風の弱い日の寄せて返す波のような感じが心地よく身体の中を通っていきます。ヘ音記号域の音が力強く奏でられると、さらに身体の中まで共鳴して、なぜか自然と深呼吸したくなっていきました。

 家でピアノを聴いているだけでは起きないだろう、身体との共鳴に驚きました。イヤホンでは、身体に音の振動が伝わってくるには限界があるでしょうし、ピアニストの手元や身体の動きを目にできるのは、ライブだけですので、一挙に五感が開いていく感覚です。ピアノの効果?!というか、そういうのを初めて体感しました。

 
≪第二部≫

Mussorgsky
展覧会の絵

 あまりにも有名な冒頭の2小節間、トランペットの出だしから始まりますが、出だししか知らなかったことに気づきました。しかも、ラヴェルが編曲したほうをオーケストラで聴いたのだと思います。
 原曲はこちらのほうで、ムソルグスキーがハルトマンの遺作展の10枚の絵からインスピレーションを得たもののようです。絵から着想し、どんな風景を感情にして、またそれがどうして音になったのでしょうか。 

 タイトルのごとく、1曲1曲が全て違う雰囲気のもので、まるで展示してある部屋が変わるタイミングのように、プロムナードが入り、次はどんな世界へ連れていってもらえるのだろう? と期待感が高まりながら、曲が進みます。もっと聴いていたいほどの35分の美術鑑賞のようでした。

 富永さんが、Mussorgskyの曲を編曲したラヴェルを直前に演奏して下さったことで、もしかして何気に聴いている側にも伝わるものがあったのかもしれません。インスピレーションの流れを逆さにした構成でした。


≪アンコール≫
Debussy
月の光

(もう1曲は曲目が分かりませんでした)

 ドビュッシーファンとして、思いがけず嬉しい選曲、ありがとうございます。富永さん、目を瞑って弾いているようにみえましたが!(笑)

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 会場は止まらぬ大拍手で幕が閉じました。ホールを出ると、ポルトガルのワインが振る舞われておりました!喉が渇いていたので、白ワイン一気に飲んでしまいました。(笑)ピアノ鑑賞のあとのワインは、気持ち良すぎでした♪ 一緒に行った仲間も「お誘い、ありがとうございました!」と感動の様子。

 富永さんの演奏が終わるたびに「すごい!」と口をついて出てきてしまいます。今日の曲を改めて調べるために、YouTubeで他のプロの演奏も聴いてみましたが、ビジュアルという点も、感じ方に左右されるという敏感なものだと感じました。
 富永さんの演奏は、目線や体が動き過ぎず、それでいて個性的な感じもあって、演奏の姿も美しい方だなと思いました。私たちの間では「王子」と勝手に呼んでいますよ。(笑)

 これまでの集大成のような、天才的な素晴らしい演奏。本当にありがとうございました。またよろしくお願いします!