オンライン英会話のいつもの先生が、先週レッスンのキャンセルが2回ほどありました。日本ではそれほど大きく報じられていませんでしたが、先月の地震に続き、今月は季節外れの台風に2回襲われていたのです。
YouTubeでフィリピンの一番被害の大きかった地域の映像がありました。その地域の方はほとんど家を失い、避難所で住まわれていました。これはひどい。地震よりもお亡くなりになられた方が多くいらっしゃいました。
そして今日、オンライン英会話の先生のレッスンがキャンセルにならず、ほっとしました。そして、衝撃的な体験についてお話を聴きました。彼女は今月、2つの強力な台風と2度の地震という自然災害に立て続けに見舞われたなか、笑顔でビデオ画面に出てきました。しかし、天井の方にブルーシートが見えました。そして、台風のお話をお聞きしたのです。
1. 最初の嵐:2025年11月3日の夜
最初の嵐は、11月3日の夜、非常に激しい雨と共に始まりました。一家は台風に備えていましたが、その威力は想像をはるかに超えていました。強風が唸りを上げ、家を叩きつけ、ついに屋根を完全に吹き飛ばしてしまったのです。雨が容赦なく降り注ぐ部屋を守るため、一家は黒いターポリン(防水シート)を張って応急処置をするしかありませんでした。彼女は「とても悲しいことです」と、力なくつぶやきました。
インターネットがまだ繋がっていたその夜、彼女は天気予報サイトwindy.comで台風の進路を確認します。画面には、自分の住む街が不気味な紫色で表示されていました。それは、台風の目が自分たちの真上を通過することを示していました。
2. 孤立と恐怖:インフラが途絶えた日
11月4日の朝、状況は一変します。インターネット、電気、電話回線がすべて途絶え、一家は完全に孤立しました。彼女が「文字通り視界ゼロ(literally zero visibility)」と表現したように、外部との連絡手段はすべて断たれ、助けを呼ぶことすらできない絶望的な状況に陥ったのです。
その夜の恐怖は、筆舌に尽くしがたいものでした。一家は24時間、一睡もできませんでした。特に真夜中の午前2時、あたりは停電で完全な暗闇に包まれ、聞こえるのは家の残骸がきしむ音と、狂ったように吹き荒れる風の音だけ。その不気味な音に耳を澄ませながら、彼女は「また死んでしまうかもしれない(we are going to die again)」という、どうしようもない恐怖に襲われたと語ります。
3. 仕事のための避難と、予期せぬ試練
ライフラインが絶たれた地元では仕事ができないため、彼女は週末を利用してセブシティのITパークにあるAirbnbを3泊予約し、一時的に避難することを決意しました。しかし、命からがら逃れた先で彼女を待っていたのは、自然の脅威とはまったく別の、現代社会ならではの試練でした。
快適な避難生活への期待は、すぐに打ち砕かれます。ホストが約束していた「300Mbpsの高速インターネット」は真っ赤な嘘で、実際には仕事にならないほど遅く、彼女は「だまされた(scammed)」と感じました。さらに、午後2時のはずだったチェックインは午後5時まで遅延させられ、台風でぬかるんだ道をひどい交通渋滞に耐えながら、心身ともに疲れ果てて到着した彼女をさらに消耗させました。
この理不尽な状況に、彼女は予約のキャンセルと返金を要求します。しかし、ホストとの交渉は難航。その時彼女が頼ったのは、なんとChatGPTでした。AIに状況を説明し、最善の対応策を尋ねたのです。ChatGPTのアドバイスに従ってAirbnbのサポートに直接連絡した結果、彼女は無事に2泊分の返金を受けることができました。大災害の混乱のさなか、AIを駆使して人間のトラブルを解決するという、まさに21世紀的なサバイバル術でした。
4. 追い打ちをかける第二の嵐と被害の爪痕
セブシティから帰宅した直後、まるで追い打ちをかけるように、再び別の強力な台風が彼女の街を襲いました。彼女の家は「崖の上(on top of a cliff)」に建っているため、風の影響をまともに受けてしまいます。二度目の嵐は、すでに傷ついた家にさらなるダメージを与えました。
台風が過ぎ去った後には、無残な光景だけが残されていました。母親が大切に手入れをしていた庭は見る影もなく荒らされ、家の周りには吹き飛んだ屋根の残骸が散乱していました。そして、おじが営んでいたトウモロコシ畑は完全に壊滅。彼女は「もう、すべてなくなってしまいました(So, now it's gone.)」と、その悲しい現実を語りました。
5. 再建への道と心の回復
現在、一家は家の再建計画を進めています。将来の台風に備え、今度は家の周りに「巨大な壁(a huge wall)」を建設する予定だと、彼女は前を向きます。
家の再建には2〜3ヶ月かかる見込みで、その間、彼女はボーイフレンドの家に身を寄せることになっています。「私の荷物はもうまとめてあって、金曜日を待つばかりです」と彼女は言います。その言葉は、彼女が今まさに、生活の再建に向けた過渡期にいることを物語っていました。
災害直後、彼女は「精神的に不安定だった(not mentally okay)」と言い、「先週は頭がちゃんと働いていなかった」と振り返ります。しかし、避難先のセブシティで美味しいものを食べ、書店を訪れ、そして何よりも「ベッドで眠れた」という、当たり前の日常の断片が、彼女の心を少しずつ癒していきました。極限の状況を生き抜いたからこそ、ごく普通のベッドで眠れるという安らぎが、どれほど魂を救うものだったか、想像に難くありません。
結び:力強く生きるということ
2つの台風と2度の地震という想像を絶する困難に直面しながらも、彼女は冷静に、そして力強く自身の体験を語ってくれました。そのレジリエンス(回復力)には、ただただ敬服するばかりです。
この貴重な体験談を共有してくれた先生に、心から感謝の意を表します。この話は、ニュース記事の数字や映像だけでは決して伝わらない、被災地の厳しい現実と、それでも前を向いて生きようとする人々の力強い声そのものです。
本当に先生がご無事でよかったです。また訪れたいフィリピン、セブ。1日も早い復興を祈るしかありません。しかし、自然災害は免れようもありません。後悔のないように「今をどう生きるのか?」再びその問いが、私にも投げかけられた気がしました。
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