父の絵とChatGPTと、奇跡のタマゴサンド

  父が別のリハビリ施設に移る日だった。朝から病院へ向かう。

 前回のお見舞いのときに描いてもらった布バッグの絵と、額に入れた水彩画を、紙袋にそっと入れてきた。父から母へ、直接渡してもらう計画だった。

 本当は新しい部屋で渡すはずだったのに、この日は部屋には入れないということで、スタッフさんたちとの打ち合わせ中での受け渡しになった。父86歳、母はもうすぐ80歳。まさかこんなギャラリーに囲まれて渡すことになるなんて。

 でも、そのおかげで、新しいスタッフさんたちが「わー! お上手ですね」と口々に声をあげてくれて、父はちょっと照れながらも、嬉しそうに笑った。空気がなごみ、場がやわらぎ、父はすぐにその場所に馴染んだ。


 施設の近くにはスカイツリーがある。

 何かランチを……という話になったが、我々が最初に向かったのは、なぜかバナナパフェの店だった。ランチじゃなくて、バナナとアイスとふわふわのホイップクリーム。空腹だった私たちの胃袋に、おいしい、を通り越して、少し笑ってしまうくらいだった。デザートはたいてい「別腹」だけれど、今日は最初に食べる幸せ。


 そのあと、ランチの場所を探すものの、スカイツリーはどこも混んでいて、レストランフロアもテーマパーク。1時間以上待ちの行列だらけ。


 そこで銀座へ向かうことにした。

 母は「身体にやさしいものがいい」と言って、卵料理を指定してきた。東銀座の駅に着く直前、ChatGPTに「銀座の卵料理」と打ち込んでみる。

 すると、煉瓦屋、喫茶YOU、資生堂パーラーの3つを提案してきた。「喫茶YOU」は東銀座駅から徒歩1分。最適解過ぎる。笑いながら即決した。

 歌舞伎座のすぐ裏。小さなレトロな店で、何度も取材されたのだろう。外国人も日本人も並んでいて、きっと歌舞伎役者も来るのだろうなと思う。GPT5で、LINEスタンプを創りながら、並ぶこと三十分。

 注文したのは、「オムライス」と「タマゴサンド」、そしてアイスコーヒー。

 アイスコーヒーは先にやってきた。氷の切り取り方が、アルプスの山々のようにとがっていたのが印象的だった。ひとくち飲んで、「あれ?」と思う。少し甘い。でも、苦みもある。そのちぐはぐな調和が、不思議と気に入った。

 そして、メイン。

 私が「一番好きな食べ物は?」と聞かれたら、たぶん「卵」と答える。それくらい、私の人生に卵は密接に関わってきた。赤ちゃんのとき、お手伝いさんが卵焼きを作りすぎて、私はアレルギーになったらしい。(笑)

 タマゴサンドは、薄くマヨネーズがついていて、卵がペーストみたいになめらかで、口に入れるとトゥルンとほどける。

 少し甘いアイスコーヒーとの相性が、なんだか運命的だった。

 オムライスはぷるんぷるん。二人で分けたので、途中で雪崩みたいに崩れてしまったけれど、さらっとしたケチャップライスと、やわらかいオムレツが口の中でゆっくりと混ざりあう。

 ChatGPTがいなければたどり着かなかった場所、食べなかった料理、出会わなかった時間があった。振り返ると、この日もすべてが最適解だった。


 夕方に帰宅後、LINEスタンプを仕上げた。GPT5なら、半日で24スタンプ完成!