初、辻井伸行さんのピアノリサイタルへ母と体験してきました。相変わらず、ピアノリサイタルの記事は、なかなか感想が書けません。語彙力と音の感想を言語化するのが難しいと感じます。記事を書くためにもう4時間くらい、辻井さんのピアノを流し続けています。
コンサートホールの照明がだんだんと暗くなっていき、辻井さんが歩行のサポートの方とご一緒に出てこられました。フジコ・ヘミングさんも、お年のためサポートの方と一緒に出てこられるので、なんか不思議な感じがしましたが、そうですよね、ピアノの位置までサポートが必要です。フォローの方が、ピアノの角のところに左手を置いてあげて、位置を知らせました。そして辻井さんは椅子の真ん中を確認するように座られて、シューマンの『蝶々』を演奏し始めました。
出だしの音から感動しました。まるで、オルゴールの音を聴いているみたい。音がクリアで、澄んでいるという感想をよく目にしましたが、私もそう感じました。あまりにも心地よく、普段、ピアノリサイタルで眠くなることがない私も、アルファー派くらいになっていたでしょうか。(笑)
辻井さんは、体全体で音を表現されていました。小さい音は小さくなって、大きく激しい音は首を縦横に振りながら、それが指先とピアノまでも的確に伝えられ、1音1音に強弱が絶妙に行き届き、すごく精密に聴こえてくるようにも感じました。
リストの有名な曲、『愛の夢』も聴けました。これは、フジコヘミングさんも、よく伺う富永峻さんも、ピアニスト定番の曲。この際、耳の感性を磨こうと、3人の演奏を何度も聞き比べているところです。何が違うのだろう? 富永さんのは、私が前回訪れたときの白寿ホールのアンコールの演奏です。
本日は辻井さんの感想なので、辻井さんの音について書いてみたいと思います。音の強弱が最もある気がします。それと、左手の音、低音部も一番聴こえてきました。やはりそれが特徴なんでしょう。どの曲を聴いてみても、音の1つ1つがとてもクリアに聴こえてきます。
そのほか、リスト『リゴレット・パラフレーズ』、『メフィスト・ワルツ第一番 S514 村の居酒屋での踊り』を演奏されました。私は両方ともはじめて聴く曲。ものすごい超絶技巧の曲なのに、やはりどの音もクリアに聴こえてきて、耳が気持ちがいいです。
そして、バタン、バタンと何度か聞こえてきたので、観客が何か物を落としたのか? と思ったら、辻井さんが、ものすごく情熱的にペタルを踏んでいたのです。ペタルの音まで聞こえるなんて、はじめてのことでした!
指はものすごいスピードで、音のドミノ倒し。圧巻でした。全盲であることなんて、すっかり忘れてしまいます。いや、むしろそれだからこそ集中されているのかもしれません。ピアノを弾き終わるとき、最後の音が消えるタメの終わりに、勢いよく、両手を鍵盤から降ろし、さっと起立しました。サントリーホールは360度座席のため、辻井さんは3方向に深々とおじきをされました! 割れるような拍手です! そして、クラシックお決まりのあいさつ、引っ込んで、また出てきて・・・アンコールとなりました!
1曲目はなにかわからなかったのですが、2曲目は、辻井さん、少しお話されました。コロナ禍で音楽家の自分ができることとして、作曲をしたそうです。
リストの超絶な曲とは真逆のとてもやさしい曲。母は感動して涙を流して聴いていました。そして、またお決まりの出ては引っ込んで、出ては、引っ込んでの拍手のあと、また出てこられました! 左手がピアノの角に置かれました! ということは、もう1曲アンコールということです! 会場、拍手で大盛り上がりです。心の中でブラボーと叫びます。
なんと、フジコヘミングさんの代名詞的な、『ラ・カンパネラ』ではないですか!アンコールに! 今回、短いコンサートなので、チケットがいつもよりお得になっているのに、これは大サービスですね。懐の深いところも見せていただきました! リピート確定ですね。(笑)
いつも大御所の『ラ・カンパネラ』を聴いていましたから、違いに気づきます。速度は速く、とても軽やかです。鈴がシャリシャリなるような、時々、蜂がブーンと飛んでいるような、魔法がかかるときの効果音のような、氷をたたいているような、強弱がはっきりしています。耳へのプレゼント。辻井さんのピアノを聴きまくったら、耳がよくなるかもしれません!
神様から与えられた聴力を努力で磨き、世界中の人たちに感動を届けている辻井さんの生演奏を聴けて幸せなひと時でした! 素敵な演奏をありがとうございました。次のコンサートもチェックして、また生演奏を体験したいですね。ありがとうございました。
次のピアノリサイタルは、4月のフジコヘミングさん@サントリーホールです!
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