ロッキー山脈のそばに住む誰かが、クリムトのバッグを選んでくれた。私のショップのベストセラーだ。
その知らせが届いたとき、今月コツコツ続けてきたことが報われたような気がした。毎日たった1ドルの広告。モックアップの見直し。商品説明の言葉を、また少し整える。地味で、静かな作業の積み重ねが、海を越えて誰かの手に届く。そのことが、やっぱり嬉しい。
そのタイミングで、新作をつくることにした。
ゴッホの《星月夜》。
世界でいちばん愛されているかもしれない絵。人気がありすぎて、正直「いまさら」と思っていた部分もあった。でも私のバッグは両面デザインなので、「裏面に何を持ってくるか」という問いが生まれる。その問いを考えはじめた瞬間、急に楽しくなった。
答えは、《ローヌ川の星夜》だった。
渦巻く空の星月夜の裏に、川面に映る星の夜。どちらもゴッホが見た夜空。どちらも青く、震えるように美しい。表と裏で、空と水が呼応している。バッグをくるりと返すたびに、夜の表情が変わる。
デザインが決まったあと、ChatGPTにバッグの両面の画像を添付して、「これに合うような背景のモックアップを作って」と一行だけ打ち込んだ。返ってきた画像に、思わず声が出た。星が背景に滲む、この写真がそれだ。
続けて「美大生が、パリのオペラ座の前を歩いている」とプロンプトを出せば、そうなる。
「ファッション誌の特集のように」と言えば、ゴッホの世界観ごと誌面に仕立ててくれる。AIの画像生成は、もうそこまで来ている。モックアップの見せ方が、購買体験そのものを変えていく予感がしている。
英会話の先生に販売ページを見せたら、"Couldn't be better." と言われた。これ以上改善の余地がない、という意味だそうだ。
同じPrintifyで同じ《星月夜》を売っているショップは、世界中にある。でも、私ほどモックアップに時間をかけているところは、おそらくない。そして、正方形のプリント画面に横長の絵をどう収めるか——その数センチの判断に、私はいつも全力で向き合っている。そこに大きな差があると、信じているから。
ゴッホが好きな誰かに、このバッグが届きますように。
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