ピンクのドレスで、オーケストラと。

友人のピアノを聴きに行った。

五十歳になる、同い年の彼女が、オーケストラと共演するのだという。モーツァルトのピアノ協奏曲 第23番 イ短調 K.448。すべてを弾く。

小学生の頃から、彼女はピアノを習っていた。頭もよかった。「この子は、きっと将来ピアニストになる」と、子どもながらに思っていた。予感というよりは、確信に近かった。

彼女は音大へ進み、海外でも学んだ。今はピアノを教えながら、こうして舞台に立っている。オーディションを受けて、選ばれて、モーツァルトを弾く。それだけでも、十分にすごいことなのだけれど。

彼女は、ピンクのドレスで現れた。

モーツァルトの明るさに呼応するように、舞台が華やいだ。にこにこしながら弾いて、決めるべきところでは、腕をすっと上げる。フジコ・ヘミングみたいに。

ああ、完璧だな、と思った。


ふと、小学生の頃の私たちを思い出していた。

あの頃、一緒に遊んでいた私たちは、それぞれ別の道を歩いてきた。私は私の仕事をして、彼女は音楽の道を続けて。でも今日の舞台を見て、思った。

ちゃんと、生きてきたんだな、と。

夢を「叶えた」というよりも、夢を手放さずに、持ち続けてきた。その時間の重みに、胸を打たれた。


五十代という年齢は、決して「落ち着く」だけの年ではない。

まだ、ピンクのドレスを着ていい。

舞台を明るくしていい。

キラキラしていい。

貫禄があって、でも重くない。そんな五十代の姿を、私は目の前で見た。とても、いい時間だった。


終演後に、ちょっとした偶然があった。私が出た扉の外に彼女が立っていた!

自撮りしようとしてスマホを構えたら、彼女がちょうどこちらを見てくれた。ピンクのドレスに、ピンクの花束を抱えたまま、カメラ目線。

私はたまたま、グリーンとピンクの服を着ていた。あとから見返したら、なんだかリンクコーデみたいになっていて、狙ったわけでもなく、打ち合わせたわけでもないのに、ちゃんと「今の私たち」が写っていた。

同級生、五十歳。

それぞれ別の時間を生きてきて、それぞれの場所に立って、こうして笑って並んでいる。

いい写真だな、と思った。

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