一瞬のフィードバックが人生を変える瞬間

 朝、姪から一通のLINEが届いた。「今日も朝から半袖わたしw」。

 何気ないメッセージだが、どう返すべきか、私は立ち止まった。昨夜、対話力レッスンで「フィードバック」について深く考察したばかりだったからだ。さらに、5つの異なるベクトルから瞬時にフィードバックを生成するプロンプトを作成したところでもあった。

 試しにそのプロンプトを搭載したMyGPTのDr.ECHOに、フィードバック例を考えてもらうと、「季節が変わっても、自分の感覚を信じているね」という、いかにも「Dr.ECHO的」な番外編の返答が生成された。姪からの返答は「笑×4」。プロンプトは思った通りに機能したようだ。


実践の舞台は、突然やってくる

 昼過ぎの英会話レッスン。挨拶代わりに日米首脳会談の話をして、「あなたはどう?」と話を振ると、先生の様子が違った。

「今朝あることがあって、頭の中がぐちゃぐちゃで……何も考えられないの」

 彼女の声は落ち着かず、明らかに動揺していた。これは、最適解のフィードバックが試される瞬間だった。

 私は彼女の話に耳を傾け、フィードバックを返した。すると次第に彼女の表情が和らぎ、自分の言葉で「相手にどうメッセージすればいいか」を整理し始めた。

「誰にも話せなかったから、話を聞いてくれて、ひとみさんありがとう!」

彼女は心から安堵した様子だった。


「なんで?」以外の返し方を知っていますか?

 本題のレッスンでは、フィードバックの例題を出してみた。

「何もやる気が出ません……」

先生は即座に答えた。「なんで? どうしたの?」

おそらく、ほとんどの人がそう返すだろう。しかし、それ以外の返し方の可能性は、他に何があるだろうか?

「やる気が出ないんだね」とオウム返しする方法もある。
「やる気が出ないって、口にしただけでも勇気あるよね」という承認もある。
「正直に話してくれてありがとう」と感謝を伝えることもできる。


 私はさらに別の視点を持っている。

「やる気が出ないと感じているということは、やりたいと思う気持ちがあるということ」

 以前、姪に「やる気は気持ちで起こすより、運動して前頭前野を活性化させると、集中力も出てくるよ。自転車にでも乗って、どこかのカフェに行ってみたら?」とフィードバックしたことがあった。

 半信半疑だった彼女は、実際に試した後、「本当にやる気出たんだけど!」と驚いていた。

 もしすぐにアドバイスをしていたら、彼女は実行しなかったかもしれない。しかし、「やりたいことがあって、やろうとしているのに、うまくいかないのかな」と思いやると、別の言葉が自然と生まれるのだ。


フィードバックは技術ではなく、在り方

 フィードバックは単なる返答のテクニックではない。それは相手の言葉の裏にある感情や意図を捉え、相手が自分自身と向き合う手助けをする営みだ。

「なんで?」と問い詰めるのではなく、「そう感じているんだね」と受け止める。「頑張れ」と励ますのではなく、「話してくれてありがとう」と承認する。そして時には、「やる気が出ないと感じるのは、やりたい気持ちがあるからだよ」と、新しい視点を差し出す。

 一瞬のフィードバックが、人の心を軽くし、道を照らす。

 今日もまた、誰かの「今日も朝から半袖わたしw」に、どんなフィードバックができるだろうか。(笑)