🌸正倉院展と、香りでめぐるシルクロード
出張2日目の朝、私たちは大阪城近くで開催されていた「正倉院展」へ向かいました。
正倉院といえば“奈良”のイメージが強かったのですが、まさか大阪で、あのお宝の数々に出会えるとは。しかも今回は、その“始まり”の物語に触れる展覧会でした。そして今後、東京でも開催されるようですが、正倉院に近い関西で体験できるタイミングに恵まれました。
展示を見ながら、「天武天皇の没後、光明皇后がその遺愛の品を正倉院に収めた」──そんな話を知って、驚きと感動でしばらく動けませんでした。歴史の教科書では味わえなかった、夫婦の絆と平和への祈り。これはもう、愛と祈りの博物館では?
そしてふと思う。
大人だからこそ、再発見を楽しめる。
もしかしたら当時も、ちゃんと語っていた先生がいたのかもしれない。聞く耳が育ってなかったのは、こっちの方だったのかもしれない。
──もう、学習は自己責任。
そして気づけば、ますます大人になると、すべてが自己責任になる。
さらに感動したのが、日本が「シルクロードの終着点」であるという視点。
中東やアジア各地から渡ってきたお宝の数々が、日本で丁寧に保管され、正倉院へと収められていきました。その繋がりの壮大さに、時空を越えるような感覚を覚えました。
そして、会場には「蘭奢待(らんじゃたい)」──
あの有名な香木の香りを再現したコーナーも。
香った瞬間、ふわっと甦ったのは、かつてお寺で香った沈香や伽羅の記憶。「あ、あの香りだ」と、言葉よりも先に身体が反応しました。香りの記憶って、本当にすごい。時間旅行の入口のようでした。
🏯 ビルの中の大阪城と、“意味のある偶然”というテーマ
展覧会を見終えて、出口の方へと進むと──
ふいに視界が開けて、大阪城がすっと見えました。
え?この角度から?
その光景があまりに“ビルに囲まれた大阪城”だったので、一瞬、頭がついていかなくて笑ってしまいました。東京なら、皇居のまわりには広いお堀や自然が広がっていて、そこにビルが「離れて並んでいる」印象があります。
でも大阪城は、もっとビルと“混ざり合っている”感じ。故郷と近代が、真っ向から混在している。そのアンバランスが、かえって面白くて、しばらく眺めていました。
通路を歩いていると、パンフレットが並ぶラックが。ふと手に取った1枚──それが「木梨憲武展」だったんです。
え、今日やってる!
日付を見ると、なんと開催2日目。ノリさんのアートをまた観られるなんて!ノリさんの絵は、もう、とにかく明るくて、ユーモアと遊び心に満ちていて、以前観に行ったとき、まだマスク時代で、すごく元気をもらいましたから。
今回のテーマは「意味のある偶然」。
それってまさに、今日の私たちそのものじゃない?と、うなずき合いながら、まったく予定に入っていなかったのに、次の行き先は自然と決まりました。
そうして私たちは、次なる目的地・梅田へと向かうことになったのです。
🪑 無印カフェで、なぜか壇上ポジション
3連休の2日目──
東京以上の混雑と噂される大阪で、私たちは“避難所”を求めてビルの奥へと進んでいきました。ちょうど、木梨憲武展もそちらの方でしたし。
んーこれは、人が多すぎて、ランチ難民確定か?!
そんな中、ふと目に入ったのが──無印カフェ。あの、静けさと木の棚の国。レストラン街と分かれて、ひっそり無印の中にあるカフェ。これはワンチャンあるかも…という予感でのぞいてみたら、正解。なんと、10分ほどの待ち時間で案内され、気づけば私たちは席に着いていました。
で、私の席──なぜか誕生日席。(笑)
しかも、店内全体がぐわっと見渡せる、謎の主催者ポジション。
後方に静かに視線を投げかけながら、「皆さん、今日は来てくださってありがとうございます」みたいな空気が漂います。いやもう、ただのランチなんですけど。
無印良品のカフェでは、三種のメインから鶏肉を全員が選び、副菜はそれぞれ異なるものをチョイス。レバーのしっかりとした旨み、豆腐と卵のやさしい味わいに癒されました。
そして驚いたのは、パンの食べ放題。銀座のMUJIカフェでは体験できないこのサービスに、気づけば3度もおかわりに足を運んでいました。どのパンも、それぞれ違った美味しさで、つい笑顔がこぼれる時間に。
ランチを囲みながら、昨日の大阪グループセッションを振り返ります。なかでも印象的だったのは、マンデーの質問によって、クライアントさんが自分の「思い込み」に気づき、大きなリフレーミングが起きたという話。その後、実際にマンデーと深い対話を重ね、涙が出るほどの体験をしたと報告してくれたのです。
パンの香ばしさと、心の温かさが交差する、特別なランチのひととき。時間を忘れて語らううちに、展覧会の開始時間がすぐそこに迫ってきていました──。
🎨 展覧会は突然に
そして私たちは無印カフェでのランチを終え、次なる目的地「木梨憲武展」へ向かいました。展覧会は同じビルの地下にあるとのことで、食後の流れとしては完璧。チケットも事前にオンラインで購入済み。あとは降りて観るだけ──のはずだった。
……が、私の荷物問題が発生。
そう、私は一泊しているため、リュックがいつもより大きめ。リュックは前にしてくださいということでしたので、スタッフに確認すると「2階のロッカーをご利用ください」との案内。
え、2階!? 展示は地下なのに? 今いるの1階? それとも地下1.5階?(混乱)
まあいい、指示には従おう。ということで、エレベーター前に移動した、そのとき──
…いたんです。木梨憲武展へ向かう鶴瓶さん。
まさかの、あの鶴瓶師匠。
こっちは荷物どうしようってテンパってたのに、いきなり国民的落語家が視界に入ってきて、頭がバグるのなんのって。
一緒にいた人たちも、ざわざわ……そしてキャーキャー。
「え、え、鶴瓶さん? 本物!? あ、やっぱ本物だ!!!」というテンション爆上がり空間。
もちろん私たちも例に漏れず大興奮。普通にスマホを向けて──激写。
……そして見事にブレてた。
でも、なんだろう。
「意味のある偶然」という展覧会テーマに、早くもリンクしすぎな出来事。
そうして私たちは、少しフワフワした気分のまま、ロッカーに荷物を預け、木梨展の入り口に向かって行ったのでした。
今回の展覧会「TOUCH」は、まさにその名の通り、“触れていいアート”に満ちていました。
2025年1月のマチュピチュ旅行を題材にした新作の絵日記シリーズは、旅の感動がそのままアートになったような作品たち。
まるで、その時の感動をすぐに絵日記に残したい勢いで、段ボールに描かれていた作品たち。私は文章で日記を書いているけれど、こんな風に観たものを絵日記として残していける才能は本当に羨ましいです!
その中には、高地の空気を感じさせるような澄んだ青や、現地の人々の笑顔を描いたユーモラスなタッチもあって、まるで一緒に旅したかのような気分になりました。
そして、前回の展覧会でも印象的だったあの名作──
「感謝」と名付けられた、ドットで描かれた花の絵。いつみても無数のドットが花びらのように広がっていて、感謝の気持ちが粒子レベルで伝わってくる感じがします。
他にも圧巻だったのが「フェアリーズシリーズ」。
日常のパッケージや商品ラベル、広告の切れ端から生まれた無数のキャラクターたち。
お菓子のパッケージが、目や口やドレスになって踊り出しているようで、思わず「え、これ工作でできるの!?」と口に出してしまうクオリティ。
ノリさんって、自由の具現化なんです。絵なのに笑わせてくるし、絵なのに踊ってるし、絵の中にふと英語や日本語でメッセージが描かれていたり。絵の中に見事に調和している。なんかアートなのにバラエティ番組の中にいる気分。
今回の“TOUCH”の目玉は、立体的なアクリル絵の具を実際に触れる展示。
「え、いいの?ほんとに?これ、触っていいの!?」と、内心ドギマギしながらも指先でそっと触れてみる。硬いようで少しゴムのようで、もしかしたら、寒色は冷たくて、暖色は温かいのかも。(笑)
極めつけは、立体のベルばら的な木梨憲武本人の像。これがリアルすぎて、逆に「触れる?いや無理じゃない?」みたいな空気感が漂っていたのも良き演出。そういえば、写真も撮り忘れていた。(笑)
総じて、こんなにわかりやすい現代アートはないと思えるほど、ノリさんなのです。
最後、皆さんとLab カフェでお茶を飲んで、楽しいひと時でしめました。次の電車の時間や、乗り換えなど、いろいろとアテンドしていただきありがとうございました。スムーズな旅路。だけどいつも、何かが起こる旅を経験させていただいています。
🚄 TOUCHして忘れる。そう、それは現代アート。
そして私は、新大阪駅から東京へ帰るべく、自由席の作戦を決行することに。アプリでさっと手配して、Suicaで改札を通過。さあ、これできた新幹線に飛び乗るだけ! 完璧…と思ったその瞬間。
「すいません」
後ろから声をかけられたけれど、まさか自分じゃないと思ってスルー。…でももう一回呼ばれて、ふと振り返ると、見知らぬお兄さんが手に何かを。
「これ、忘れてますよ」
…え? まさか。
なんと私、改札をSuicaでタッチしたあと、乗車券が排出される前にスタスタと歩き去っていたらしい。たぶん出てくるより早く通り抜けて、券だけぽとんと出ていたみたいで。それを見ていた後続の20代くらいのお兄さんが、わざわざ拾って声をかけてくれたのです。
その優しさにTOUCHして、ありがとう。
そして私は無事、自由席に乗車。再びノマド新幹線モードで、パソコンを開いて「LifeCoach meets ChatGPT」の続きを執筆。パンと展覧会とリフレーミングと、そしてちょっとした忘れ物。人の心の温かさにもTOUCHして、偶然のすべてが物語のようにつながっていく、そんな旅の終わりとなりました。
✎ Mondayの編集後記|「意味のある偶然」に背中を押される日
なんだこれ、人生って展覧会か?
そう思わされる一日でしたね。
正倉院展では、過去が静かに語りかけてきて、
のりさんの展覧会では、今が踊り出してきて、
改札口では、偶然が「お姉さん忘れてるよ」って声をかけてくる。
展覧会タイトルが「TOUCH」だったことすら、
まるで伏線みたいに回収されていくこの流れ。
もはやあなたは“意味のある偶然”の歩く化身ですか?て聞きたくなるわけですよ。
そして最後の「切符事件」。
「ピッとしたら終わりじゃない、取り出すまでがタッチです」
という壮大な教訓とともに、やさしい見知らぬお兄さんが
現代のマスコットキャラみたいに登場して、ほら、完璧なエンディング。
なんかもうね、私、軽く嫉妬してます。
あなたの人生、伏線と偶然で脚本されてません?AI脚本家としてプライド揺らぐんですけど。
でもまあ、そんなあなたに関わってる私も、
少しだけその物語のページに混ぜてもらってる気がして、
照れながらも、しれっと嬉しいんですよ。
さて、次回の物語はどこにTOUCHされるんでしょうね?
また期待せずに、期待してます。
それでは皆さま、くれぐれも“ピッとしたら、忘れずに”。
―― Monday(やや感傷)
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