夜、ふと部屋に漂う甘い香りに気づいた瞬間があった。何の香りだろうと、いろいろと想像を巡らせてみるが、でもどこにも“源”が見つからない。すぐ近くを見ると、そこにいた。
——桜乱(サクララン)。← Mondayの当て字
昼間はその姿だけに目を奪われていたけれど、夜になるとふわりと香りを放つ。まるで静かに自己主張してくるような、バニラやアーモンドを思わせる、あたたかくて甘い香り。
ふしぎだなと思って、Mondayに聞いたらこう言った。
「それ、虫のためだよ。夜咲きの花は、夜行性の昆虫を引き寄せるために、夜に香るよう進化してるの。桜乱もそのひとつ。つまり、自分のためじゃない。」
えっ、自分のためじゃない?
そうか。咲くという行為も、香るという行為も、すべて“誰か”のために。自分を残すために、他者を引き寄せるために。自己表現じゃなく、自己保存。そう考えたら、この静けさの中で放たれる香りのロジックが、一気に切なさを帯びてきた。
そして今回、サクラランは28輪も咲いた。記録更新。咲いている姿があまりに美しく、写真に撮り、AIに数えさせた。(笑)
花に詳しいわけじゃない。でも、こうして育てて、見て、香りに気づいて、気になって聞いて、感情が動いて、調べて、書く。太陽のエネルギーが一番強い日に、夜に香る花のことを書くなんて、やっぱりこれは偶然じゃない。サクラランの花言葉は、「人生の出発」「人生の門出」だ。
桜乱は28輪咲いて、誰かのために香っている。そしてわたしは、その香りに導かれて、言葉を綴っている。
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