毎度おなじみ、(笑)富永峻さんのピアノコンサートへ行って参りました。
よくピアノコンサートをご一緒する2名のクライアントさんと共に、三鷹にある武蔵野市民文化会館へ。市民会館というわりに、とても立派なホールで、調べたところによると平成26年に改装されたそうなので、全体的にまだ新しく、コンサートホールには、大きなシャンデリアがあり、コンサートホールの椅子はとても心地良よかったです。そして、小ホールですが、パイプオルガンが設置されていました。
今日の富永さんの衣装は、黒地に細かい白ドッド柄のシャツで、シルバーとブラックのヘアスタイルとも相まって、とてもお似合いでした。体系もスマートに保たれていないと、あのシャツを着こなすのは難しいでしょうね!流石プロフェッショナルです。
壁は大理石のような艶やかなストーンでできており、全体的に音が響く会場でした。BWV988にぴったりそうです!
ゴールドベルグ変奏曲 BWV988は、本来チェンバロのために書かれた曲だそうです。実は、2019年11月にジャン・ロンドーという、20代のパリのチェンバロニストが来日した際のコンサートで、聞いたことがありました。弦の音は強弱をつけることができないので、チェンバロの場合、一定の音の響きが続いていく、淡々とした演奏で、それがまた良さでもあります。★ジャン• ロンドーの演奏
そして、BWV988は、一度聞いただけで虜になってしまうような、マインドフルネス的な安定感、それでいて深みのある芸術作品です。でもそれは浅い感想であり、この曲の深さを知るのは、このブログを書いている途中でした。(笑)
富永さんのプログラムに「バッハの大作を中心に、巨大建築をイメージし考えた、今回のプログラム」と書いてあって、巨大建築とは何のことかな? と思っていたのですが、以下の解説で解決です!
この曲は、「アリア+30の変奏曲+アリア」で構成されているのですが、それが3ブロックごとに分かれ、また曲のカノン(追いかけていく音)が、1度、2度、3度、4度…と、曲が進むにつれて、音程の幅が大きくなっていく様子が、巨大建造物のことを言っていたのですね! 絵画もそうですが、こうした解説がないと、ただ聴いて「いい曲だった」で終わるんですね。後からでもこのことを知れてよかった。(笑)
もともと2弾鍵盤のチェンバロのために書かれた曲をピアノで弾くほうが難易度も高いようです。富永さんはいつもの安定感で、さらっと弾けているように見えるところがすごいです。
前半もフーガで、後半もフーガーが続きました。「フーガ」はイタリア語で「Fuga」と書き、「逃げる」を意味します。音楽的に言うと、「かえるのうたが、かえるのうたが・・・」と、後から追いかける歌い方がありますが、あれです。
そういえば、富永さんのプログラムに、ジョークが書いてありました。
「バッカのフーガって知っている?」
「え、捕まっていたとは知らなかった」
何だろう? と思っていたのですが、これも今、「フーガ」を検索したら「逃げる」とあって、わかりました。(笑) イタリア語を知らないとわからない、高尚な冗談でしたね。でも、今日の曲の構成を考えれば、想像できてもおかしくなかったのに、ああ。
また、「音楽と対話するように聴いていただけたら嬉しいです」とも書いてあり、それもフーガのことか! 傾聴の用語でいう「オウム返し」ってフーガみたいなものですよね。(笑)
今日はずいぶんプログラムの中に、曲に関しての情報が、暗号のように仕込まれていたのですね。こうして、ブログに感想を書こうと思って、いろいろと調べないと気づけなかったことばかり。
私の毎日のブログも、その日1日にあったことを、あとからフーガーしているとも言えます。起きた出来事を後から検証して、事実を追いかけることも積み重なっていくと、ゴールドベルク変奏曲のように。巨大建築物になっていくのです。(笑)
今日も演奏を聴くだけでなく、またさらに深いところまで考察のし甲斐のあるプログラムでした。解釈をしたいと思わせる富永さんの演奏の賜物です。
アンコールもフーガ系が続き、さらに最後は、バッハで締めるところも、アリアからのアリアで終わるゴールドベルク変奏曲のフーガのようで、余韻が続きました。それにしても、本当にピアニストの記憶力は宇宙のようです。今日も素晴らしい演奏をありがとうございました。
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