映画『生きる』(2022)鑑賞 or ゾンビにならないように。

 黒澤明監督の『生きる』のイギリスリメイク版 "Living"。最近の映画が3時間なので、2時間以内の映画は短く感じますね。(笑)

 黒澤監督の『生きる』は数年前に観たことがあります。映画のモチーフである「ブランコを漕ぐ」ところや「役所」で働いているところ。テーマは、死を意識することから、生きることについて考え、変化していく主人公と取り巻く世界の変化を描写したものであることは同じです。

 この映画を作ったのは、日本で生まれ、英国で育ったノーベル賞作家のカズオ・イシグロ氏だそうです。以下の解説動画によると、日本人と英国人は、礼節と上品を重んじ、自分の感情をあまり表に出さないメンタリティーが似ているところだそうです。たしかにそう考えてみると、英国版にリメイクされたのも全く違和感がありませんでした。そして原作のほうが40分も映画が長い理由も語られていて、日本の官僚主義を痛烈に批判した社会派作品にもなっているからだそうです。

 ビル・ナイ(Bill Nighy)演じる、課長ウィリアムズのほうが、原作よりもさらっとしていたというか、課長渡辺のほうは、ものすごい絶望感や喜びが、ぎょろっとした目から怖い感じで伝わってきていました。(笑)だからもっとおどろおどろしい映画という印象が残っていたのですが、英国版は静かにジワジワと伝わってくる感じでした。

 デスクの上も、両方とも書類の山でいっぱいなのですが、英国版のほうが、日本よりも良さげなラックが机に上にタワーのようになっていて、スタイリッシュ。そして、イギリス英語漬けになれるのもいいですね。(笑)

 すっかり大事なシーンを忘れていて、改めて感動したところがありました。課長ウイリアムが、女性部下の子が生き生きしているところに興味を持って、ごはんに誘ってみたというところ。そして、もう余命いくばくもない主人公は、彼女の帰り際になってもなかなか別れがたく、ようやく自分の余命について、はじめて自分を知っている人に伝えることになるというシーンで泣けてきました。その部下には、「死んでるんだけど、生きている」という意味で、「ゾンビ」とひそかにあだ名をつけられていたようですが。(笑)

 ふと「生きるとは?」について考えたくなるときに、思い出したい作品です。'Love Actually以来のBill Nighyの歌もよかったです!