辻井伸行さん@サントリーホール 涙腺崩壊。

 辻井伸行さんのソロピアノリサイタル@サントリーホールへ行って参りました。今回の席は、前から19列目のセンターの島あたりです。全体が見渡せて、音もよく、顔の表情も見える位置でした。

 前半は、ベートーヴェン『テンペスト』やリスト『ヴェネツィアとナポリ』でした。ベートーヴェンの『テンペスト第3楽章』はフジコさんのお気に入りでもあるので、聴いたことがありました。フジコさんは、哀愁漂うドラマチックでマイルドな音であるのに対して、辻井さんは一音一音がとてもクリアに聞こえて、音ずつの表現をこちらにぶつけてくるような、あなたはどう感じますか?と迫りくるものがありました。素晴らしかったです!

 

 休憩中、ふと目立つ方がいらっしゃるなと思い、なんと辻井氏のお母様ではないですか!マスクを外されて、写真撮影に応じていらっしゃったので、きっとそうでしょう。そしてそのすぐあたりに、なんと、YouTuberでありピアニストのCさんもお見えになられているではないですか!高身長でオシャレなので、きっとそうだと思います!Cさんは後半で辻井さんが弾く、「カープスチン 第三曲 トッかティーナ」をUPされていたはず!なんかすごい日に来られて嬉しく思いました。

 さて、後半は大好きなラヴェル!YouTubeでも繰り返し聴いている辻井さんの『亡き王女のためのパヴァーヌ』と『水の戯れ』が特にお気に入りです! 後半は、背もたれに寄りかからず。少し前のめりで聴きました。集中できます。やっぱり素敵な音です。心が浄化されていきました。

 そして辻井さんが一度舞台袖にさがって、また出てこられました。最後はカプースチンです。辻井さんのコンサートに何度も行っていますが、カプースチンは、はじめてです。どんな曲なのでしょうか? プログラムを見ると、ニコライ・カプースチンは、2020年、最近亡くなられた、現代作曲家なのですね。ウクライナに生まれ、14歳でモスクワに移住したようです。そして、ジャズにとても影響を受けた作曲家だとか。

 辻井さんがピアノを弾く前に、ハンカチで鍵盤を拭かれました。何が起こるのでしょうか? 

 第1曲『プレリュード』は、出だしから突き抜けるような明るさで、音が駆け巡ります。それに聞いたことがある!すごい、すごすぎる! 辻井さんが鍵盤で踊っているかのようです。(笑)見えないからなのか、どんなに全身全霊で弾いても、辻井さんには関係ありません! 頭が左右に揺れながら、軽快に音を転がしていきます。8つの演奏会エチュードとありますが、1曲ずつ会場から割れんばかりの拍手が起こりました。

「プレリュード~~トッカティーナ~思い出~冗談~パストラール~間奏曲~フィナーレ」と続きます。

 クラシックというよりもJAZZという感じで、ものすごくオシャレ! 辻井さんもノリノリのご様子!ホテルの最上階の究極のJAZZ BARにいるような、ものすごく贅沢な気分。(笑)異次元空間でした。

 JAZZと辻井さんの相性が良すぎて感動し、涙が溢れてきました。神業すぎる。どの曲も高速で、ものすごいリズム感が必要とされます。無我夢中でないと弾けない領域。度肝を抜かれました。辻井さん、カッコイイ、最高すぎる!そして、とても楽しかった!

 会場、割れんばかりの拍手。もちろんアンコールへ。何を弾かれるのかなと思ったら、『主よ人の望みの喜びを』。JAZZからいっきに神聖なサントリーホールへと静まり返り、ジェットコースターからの休息となりました。

 申し訳ございませんが、カプースチンからのアンコールで、バッハとはちょっと軽いんじゃないかなと思ったら、「たくさんの拍手を頂きましたので、リストの『悲しみ』を弾きます」と辻井さん。会場は笑いと温かい空気に包まれました。

 これで終わりかと思ったら、また舞台袖から戻られ、左手がピアニに置かれました。まだ弾くんだ。(笑)何の曲か忘れました、もはや感動しすぎて、かるく放心状態です。(笑)

 もうこれで最後だろうと思ったのですが、会場から拍手が鳴りやみません。だから、もう一度辻井さんが出てきました。この挨拶で最後かなと思いきや、左手にピアノを触り弾く合図をしました!えええええ!!!!会場最高ボルテージ。

 なんの曲でしょうか? 「ミ♭ミ♭ミ♭」。クラシックファンなら3音でわかります。会場どよめきました。あんなに高速な曲を弾かれたのに、リストの『ラ・カンパネラ』だと?!辻井さんの体力無限。

 どよめきの最中から始まった『ラ・カンパネラ』。光のような速度で、最高峰のラ・カンパネラ。涙が止まりません。一番高音の「ミ♭」の連打が、心に刻まれていきます。

 久しぶりのスタンディングオベーション。8割くらいの人が立ち上がっていたのです。ブラボー解禁してくれ!(笑) 拍手で辻井さんに感動を伝えるしかない。だから必死でみんな拍手をしていました。映画のラストシーンのように。

 辻井さんのお客様を喜ばせたい気持ちがすごいです。目が見えないハンディがありながら、全身全霊で演奏に打ち込む様子は、本当に感動します。遮断されているからこその音の響きなのかもしれません。YouTubeで音を聴いているだけでもクリアな音はわかりますが、あの音を出すのに、全身を使っている様子を目の当たりにすると、やはりもっと感動します。カプースチンをとても楽しそうに弾く辻井さんにオーディエンスも嬉しくなります。しばらく、カプースチンにハマりそうです! 聴いているだけで心躍ります♪ 

 次回の辻さんは、5月のラフマニノフのチケットを購入しています!新しい辻井さん、最高でした。ブラボー! ありがとうございました。


P.S. え!!!何だこのおじさまは!と思ったら、カプースチンの弾くカプースチンがありました! ご本人様の演奏が聴けるなんて。流石の演奏です。(笑)