富永峻&マルタン美樹 「2台のピアノの夕べ」ピアノリサイタル。

 ピアノというものは、基本的にソロばかりと思っていたので、2台とは未体験ゾーンでした。ピアノがどう配置されているのか? も行ってみて初めて見る光景です。うまいこと、ピアノの曲線に沿って、2台が合体。ガンダムのような、超合金ロボ的なはまり具合でした。もしかして、二つが合体できるように創られたのなら、感動です。片方のピアノはオープンになっていて、もう片方は、コンバーチブルではなかったのも、面白いなと思いました。



(こちらはフリーのイメージ画像です)

 ソロと何が違うのか? 人間もソロでいるときだから楽しめることもあれば、二人でいるから楽しめることもある。まずは、ソロの人が成熟していないと、二人での喜びは達成できないんだと思います。

 富永さんもマルタン美樹さんも、日本人でありながら、ヨーロッパ歴のほうが長いピアニストということもあって、息もぴったり。2台のピアノなのに、1台のピアノを聴いているような、完璧な調和のとれた演奏に感じました。

 ローゼンブラットのカルメンから始まり、ラヴェルのおとぎ話的なファンタジー感を経て、モーツアルトのα波が出てきそうな安定感、自律神経のバランスが整ったところで、ドラマチックなラフマニノフ・・・・という演目。1つのコンサートが、テーマパーク的な楽しみも提供してくれているかのようです。だから、4人の作曲家を全て経由しないと、完結しないような醍醐味です。

 マルタン美樹さんが、音楽教室をされているのもあって、かわいい子供たちもたくさん聴きに来ていました。私の隣の女の子が、くしゃみ、鼻水が止まらなくなってしまったのは、モーツアルトのとき。最後のラフマニノフでは、すっかり安眠してくれて助かりました。(笑)

 『2台のための組曲大2番 作品17』は、ラフマニノフ(1873-1943)が、スランプから脱することができた曲とのこと。YouTubeで別のピアニストさんが弾いているものですが、こちらになります。

★Argerich, Freire - Rachmaninoff - Suite No 2, Op 17



 私は第三楽章が、体の中に音が入ってきたのを感じました。これまでの旅行先で見た、光、風、音、水、海、空が私の頭のスクリーンに投影されたのです。波がいったりきたり、風がそよそよ、枯葉が風にのって、くるりんと回転していたり、それはそれは、幸せで平和な風景が繰り広げられました。幸せに浸っていると、涙が流れてきました。まるでヒプノセラピーを受けているみたいです。私の潜在意識がとてもポジティブな感情で満たされたのです。あ、こういうときこそ、アファメーションを唱えればよかった。次のピアノコンサートは、アファメーションを用意しておこう。(笑)

 あとで第三楽章の曲名を見たら、「ROMANCE」とありました。どおりで。(笑)

 そんな平和な第三楽章にもう少し浸っていたい気持ちをよそに、第四楽章は「Tarantella」という、情熱的な旋律へ。出口の見えない迷路をさまようイメージが出てきました。このまま、どうなって行くんだろうと、探求していくような、そんな気持ちで聴いていました。2台のピアノが、対戦しているかのような雰囲気も伝わってきました。「どうだー!」みたいな。結局二人で助け合いながら、最後まで駆け抜けていきました。

 一緒に行った友人は、この第四楽章が一番ぐっときたそうです。私が第三楽章で泣けてきたというと、「え?!」と驚くほど。人によって感じ方はさまざまですね。それが、音楽のいいところ。捉え方は自由。このままディスカッションへ。(笑)

 駅近くのデニーズにて。なんでこんなに食べられるんだろう?!ってくらい、食欲旺盛になってしまったことに、二人で驚きました。ワイン、前菜、フライドポテト、海老と半熟卵とうにソースのドリア、薬膳風もつ鍋、デニーズアプリの「バースデークーポン券」のパンケーキで締めて。



 素敵な夜になりました。富永峻さん、マルタン美樹さん、ブリリアントな演奏をありがとうございました♪