濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』が、第94回アカデミー賞の作品賞ノミネートされていますが、邦画をほとんど見ない私なのでスルーをしていたところ、母が観たいとのことで、流れで見ることになりました。
その日は都内に母とセルフGo To Travelの日で、そのホテルから近いところの映画館で、「特別上映」になっていることに気づきました。時間を見ると、19:00~22:10 ながっ! 先月見た『House of GUCCI』は、159分とあり、そちらも長いわりに結構集中して観られるほど見どころだらけだったのですが、それよりも長い、179分の作品でした!
ところが、ずっと映画に釘付けになって、あっという間に感じました。セリフだらけの映画だから、耳が集中力を発揮するのかもしれません。どんどん、先を知りたくなります。だから、見逃せない、サスペンス的な要素も感じます。
映画を一言で言うと、「喪失感を再生する物語」です。心にぽっかり穴を開いたもの通しの言葉の交流。その言葉の交流が、さらに映画内の演劇のセリフともシンクロしていて、物語の構造が、2重に折り重なっているのです。なんか終始不思議な、シュールな、アーティスティックな感じというか、こんな風に表現していく映画なんて、はじめて見た衝撃。
セリフも多い映画ですので、1回観ただけでは、その内容は全部把握しきれないけれど、傾聴の仕事をしているものとしては、それぞれの人が抱えているものが、対話を通して、どんどん詳らかになっていく様に興味を持ちつつ、ずっと目が離せなかったのもありますし、タイトルのとおり、車内という空間で、お互いに目を合わせずに、言葉だけで交わしていく部分というのは、話している内容と共に、その声の温度感みたいなもので、その言葉が真実かどうか? 腹の底から話しているか? みたいなことも感じられます。そのように対話を重ね、相手と本音の部分で交わったときに、はじめて自分と向き合う覚悟も生まれていくのかなと思ったりもしました。
自分の感情を押し殺したままでは、どんどん無感情になりますし、結局は、自分の気持ちを自分で聴くことが、自分を満たすことにつながる。そんなメッセージもあったのだと思います。
いくつか、映画を観ただけでは解けない謎もあるのですが、YouTubeでものすごい映画のレビューをされている方のを見つけました。映画がよくわからなかったというかたは、是非ご参考に!と、こちらの方もおっしゃっていますので、リンクしておきます。
芸術作品のような映画。語りたいことがいっぱい生まれる映画です。いろいろと書いてみたいことはありますが、ネタバレ確実になるので、今回はこの辺で失礼いたします。(笑)
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