辻井伸行さんまで2メートルで感じたこと。

 今年5回目の辻井伸行さんのピアノコンサートへ母と鑑賞へ。今回もバイオリニスト&ARKクラシックスの指揮者である三浦文彰さんとの公演です。

 コロナ禍により、コンサート後、レストランが閉まって食事ができないことがわかっているので、18時前に到着し、サントリホール前の陳健一さんの中華をいただきました。私は朝型になっているので、18時夕食はいつも通りという感じです。ものすごい辛い担々麺があり、ミニサイズだったのでオーダーしてみたのですが、案の定激辛で、私は一口でパス。母は一口目から咳き込んだものの、頑張ってコンプリートしていました。(笑) これで夕食の心配もなく、余裕をもってサントリーホール入りです!

 今回の席は、1階2列18/19番。「ぴあ」の先行抽選で購入するので、いい席が取りやすいです。前回4列目センターで、いい席だなぁと言っていたのですが、2列前、4席左に動いただけで、全然見え方が違いました。ピアニストの手もクリアに見えますし、辻さんから半径2メーター以内の距離です!どんなイリュージョンな体験ができるのか?とても楽しみになりました。

◎前半オーケストラのみ:モーツァルト 交響曲 第41番 ≪ジュピター≫ ハ長調 K 551

 どこかで聴いたことのある曲かと思います。ヴァイオリンが様々な表情を見せる、格調高く、優美な曲。モーツアルト最後の新フォーニーです。

 今回、前から2列目という席で、こんなにも聴こえ方が違うのか?! という驚きの体験をしました。

 まず1つ目は、いつもあまり気にならない指揮者についてです。指揮者がいなくても、ある程度演奏できるものなのではないか? と勝手に考えていたのですが、(笑)そうではないことに明らかに気付いたのです。

 指揮者は、演奏者をやる気にさせていたのです!(笑)指揮者を見ていると、次にどの楽器が目立つかが、見えてきました。指揮者の合図に応えた演奏者たちは、満足そうににっこりしていたのです。そう、演奏中に指揮者は演奏者を承認していたのです! 前から2列目だからこそ見えた、やり取りでした。

 そして聞いているオーディエンスも、指揮者のタクトに乗せられている気がしてきました。指揮者の盛り上げパターンも数えきれないくらいあって、「そうくるか!」みたいな手の動きの数々! 言葉で指示はできなくても、手と体と目線の動きで、十分に伝わってきます。そのため演奏者は、音の強弱を安心して指揮者に委ねることができるんですね。三浦文彰さん、お若いのにすごい!これからの進化が楽しみとなりました。

 2つ目の違いは、センターに座っていることで、左右の耳で違う音が入ってくる!です。スピーカーから流れてくる音は、1つにまとまった音ですが、センターの席に座っていると、左耳からバイオリン、右耳からビオラ・チェロ・コントラバスとなります。耳にとって至福の時間で、終始マスクの下では、自然と笑みがこみ上げていました。勝手に口角が上がるので、本当に耳からの指令かと思います。(笑)


◎後半ARK+辻井伸行:Beethoven - Piano Concerto No 4 in G major, Op 58

 後半から辻井さん登場です! ピアニストまで2メーターの距離で、鍵盤の手の動き、きれいに研がれた爪まで見えました! 音にとても強弱のある曲で、小さな音ほど身体にためが入りながら、鍵盤を鳴らす様子に感動しました。辻さんだけのソロパート、すごい! 言葉になりません。

 音と手の動き、身体の動き、呼吸まで聞こえます。前のめりになって集中して聞き入りました。ピアノから距離があると、自分都合の雑念が浮かんでいることが多いですが、これだけ近いと、本当に集中して聴けるものだなと。そうすると、感動するポイントを探そうとしなくても、自然と感動してしまうのだと。

 ブラボーでした! 目の見えない辻井さんには、大きな拍手が一番です。サントリーホール大ホールが大拍手で包まれました。辻井さんもとてもうれしそうに、90度のお辞儀をされました。オーケストラの方々にも深々とお辞儀をされ、そうすると客席は、辻井さんのお尻になってしまうのですが、(笑)そういうところが、かわいらしいですよね。そんな深々なお辞儀に胸がいっぱいになりました。母も感動で涙していました。

 そしてクラシックお決まりの、何度か舞台のそでに下がり、出てを繰り替えし、アンコール曲となりました。

◎辻井伸行さんアンコール: Liszt/Wagner Lohengrin Elsa's Bridal Procession エルザの大聖堂への行列

  辻井さんの左手が再びピアノに置かれました。これから弾く合図です。静寂に包まれたサントリーホールの中、どの曲がアンコールになるのか? 固唾をのんでみんなが見守ります。

 とても静かに始まりました。知らない曲だったので、あとからFacebookのファンページで調べたところ、リヒャルト・ワーグナーの「エルザの大聖堂への行列」と判明しました。

 感動の余韻にさらに浸らせてくれるような、しっとりとした曲でした。これで感動しない人はいないのではないかというくらい、グッとくるものがありました。涙堪えるのが大変です。

 3夜連続のサントリーホールの締めの演奏です。辻井さんの満面の笑みは、いつものように大成功だったのでしょう!幸せなオーラーがこちらまで伝わってきました!ありがとう、辻井さん、三浦さん、ARKの皆さん! 

 同じS席でも、用意周到で先行抽選で購入するのと、単なる先行で購入するのでは、違うものです。遠くの席だと、左右、センター、どこに座ってもそれほど差がない感じですが、前の方の席になった場合、センターより右では、顔しか見えず。左すぎても背中しか見えず…ということになります。

 なのでベストな席は、センターよりも少しだけ左側に座ることです。そうすると、左耳と右耳からサウンドが別々に入ってきたり、さらに前の方に座れば、演奏者の表情と手の動き、息づかいまで感じ取ることができるという発見がありました。いろいろな席を体験して、検証してきたからこその結論に辿り着いたのです。また次回がすぐです。(笑)