まず足のサイズを測ってもらい、店員さんにこれまでの登山歴を伝えた。下りでつま先が痛くなることや、基本は日帰り登山であることなどを話しながら、いくつか靴を試着していく。
そうして会話を重ねるうちに、ずっと抱いていた登山靴への謎が、ようやく解けてきた。
私はどこかで「タフな山へ行くなら、ゴツい登山靴が必要なんだろう」と思い込んでいた。
けれど、話はそう単純ではない。
日帰りなのか、山小屋泊なのか、テントを背負うのか。
荷物はどれくらい重いのか。そして、どんな路面を歩くのか。
状況によって、必要な靴の硬さもホールド感もまったく変わってくるのだ。
つまり、「上級者だからゴツい靴を履く」わけではない。
あくまで用途に合わせて選ぶものなのだと知った。
高尾山なら、トレランシューズで軽快に歩くのが気持ちいい。軽い靴には軽い靴のよさがある。
一方で、蓼科山のような岩場の多い山なら、軽やかさは残しつつも、足をもう少し頼もしく守ってくれる靴がほしい。
今日試したのは、まさにその中間の一足だった。
今の靴よりソールが少し厚く、足首もしっかり包んでくれる。
けれど、いかにも「重登山靴」という威圧感はない。私には、このくらいがちょうどよさそうだ。
ちなみに、ホールド感がどれくらい違うのかというと――
なぜか私は店内で、マイケル・ジャクソンのようにつま先でキュッと立ってみたのだ。
……立てた。
登山靴の試着で、私は一体何を確認しているのだろう(笑)。
ともあれ、それくらい足首がキュッと支えられている安心感があった。
そして何より驚いたのが、サイズだった。
普段の私はヨーロッパサイズで39、スニーカーなら25.5cmがちょうどいい。
面白かったのは店員さんのアプローチだ。あえて「何センチにしますか」とは言わず、同じ靴のサイズ違いをいくつか履かせてくれた。
かかとをトントンと合わせてから、つま先にどれくらいの余裕ができるかを丁寧に確認しながら、私の「本当のサイズ」を探っていく。
そうして厚手の登山用ソックスを履いて行き着いたのは、まさかの「26.5cm」。
試したイタリアブランドの靴は、レディースでも27cmまで展開があるのだという。
「そんなに大きくて大丈夫?」と一瞬疑ったけれど、傾斜台を下ってみて驚いた。
つま先がどこにも当たらない。それでいて、足全体は心地よく固定されている。
店員さんはさらに、下りにおける「重心」の重要性も教えてくれた。
人は恐怖を感じると、どうしても体が後ろへ逃げてしまう。思い出してみれば、私も岩場では骨盤がかなり後傾していた気がする。重心が後ろに流れると、結果として足が靴の前に滑り込み、つま先を痛めてしまうのだ。
靴選び。重心。歩き方。そして経験。
「下りが苦手」というシンプルな悩みの中には、実はさまざまな要素が複雑に絡み合っていた。
足を測ってもらう。履いてみる。プロに質問する。傾斜を歩いてみる。
ひとつひとつ確かめるうちに、絡まっていた謎がするすると解けていった。
思えば、高尾山レベルの靴でよくこれまで20もの山を登ってきたものだ。
新しい靴と、新しい重心。この組み合わせで下ったとき、一体どんな景色が見えるのだろう。
今日のベストパートナー候補は決まった。
けれど、この「どれにしようか」と迷う贅沢な時間も、もう少し楽しんでみようと思う。
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