「プロですか?!」 ──87歳、父とのトートバッグ制作日記。

2025年7月の終わり。

リハビリ施設にいる父のもとへ、“ある計画”を胸に訪ねました。

それは──絵を描いてもらうこと。


まずは作戦その①:スイカとミニカツサンドでご機嫌を取り。

作戦その②:布セリアで見つけた、麻のような風合いの無地トートバッグと布用絵の具一式を準備。

さらに、色が染みないように内側に下敷きも購入。(これが本当に助かった)模写用の絵もiPadにCanvaから選んで準備万端。私の頭の中ではすでに“絵を描く流れ”がシミュレーション済み。


いざ、実行へ──…が、少し誤算が。

事前に用意していた4枚の候補の中に、父の「これだ」という絵がなかったようで、急遽Canvaで検索し直すことに。カラフルな4色のお花を見つけて、ようやく「描こうかな」という気持ちになってくれました。


鉛筆で下描きをしてから、布用絵の具で色を重ねていく──そんな段取りでスタート。私は寄り添いながら、でも描くのは父本人です。

位置の指示もしていなかったのに、父はなぜか一番上のギリギリの位置からお花を描き始めました。87歳、力は弱いけれど、持ち前のセンスで少しずつ形にしていく姿に、じわじわと感動が湧いてきました。


いよいよ色づけ。

限られた絵の具の色を、私がパレットで調整しながら、できるだけ見本に近い色をつくり、父はその色で自分の線を塗っていく──そんな連携プレイが始まりました。

集中すること1時間15分。

ついに、完成!

いやはや、私も付き添いながら集中力を使いましたが、父もよくここまで丁寧に塗ったなと感心。ブラボー! 

実は以前、父が布用絵の具で描いた北欧柄のトートバッグについて、母が良く褒められるほど好評だったらしく。その“第二弾”をお願いしたいなと思っていたのです。


そして完成直後。同じ施設の、たぶん70代くらいのおじさまが駆け寄ってきて、「すごい上手ですね!花の色がとてもきれい!これ、自分で描いたんですか?えっ、プロですか?!」と、大興奮で褒めてくださったのです。

それはもう、心から感動してくださっているのが伝わってきて、こちらまで嬉しくなりました。

父も「プロ」の響きに、まんざらでもない様子でニッコリ(笑)実際、プロではないけれど、絵心はあるタイプ。

塗り絵じゃなくて、真っ白なキャンバスから描けるって、やっぱり才能です。



それにしても──人の作品にここまで感動してくれる感性を持ったおじさまにも、私は感動しました。なんて素敵な人!

今回、背景を加工して仕上げてみましたが、あらためて見ると、本当にいい作品になったなとしみじみ。

さて、次回は「ゴッホのひまわり」に挑戦してもらおうかと、私はまたひそかに企んでいます。できあがったら……Tシャツにしようかな。(笑)