結論から申し上げますと、今回は、昨年印象的だった「カプースチン」に続いて、最高すぎるのコンサートでした!!! ライブならではのハプニング体験までありました!
半年ほど前にGETした辻井さんのピアノソロコンサートの日が、ついにやってきました!今回は800席の紀尾井ホール。少し小さめの会場です。チケットは毎回「ぴあ」の先行抽選で購入していますが、即完売が当たり前の人気ぶり。今回は1階最後列の席で、さらに収録が入っていた関係で私の列とその前の列には空席がありました。右隣も後ろも人がいない、リラックスできるとても良い席でした。
コンサート直前にChatGPTを使って事前予習を済ませ、観客としてのメンタルリハーサルもばっちり。今回、コンサートの直前まで調律師がピアノを調整していたのが印象的でしたね。こんな光景もはじめてのことです。収録が入っているからでしょうか。
辻井伸行さんのピアノソロコンサートで感じた音楽の印象派
いざ、辻井さんが緊張した様子でステージに登場しました。ドビュッシーの《版画》が始まります。「1. パゴダ(塔)」→「2. グラナダの夕べ」→「3. 雨の庭」という3つの曲です。
辻井さんが「塔」の最初の音を奏でた瞬間、その一音だけで全身に鳥肌が立ち、感動が一気に体を駆け抜けました。
ドビュッシーの音楽は昔から好きでよく聴いていましたが、今回、曲のタイトルや聴きどころを意識して聴くことで、より情景が鮮やかに浮かび上がり、音楽を“ビジュアル”として楽しむことができました。それにしても、辻井さんは実際にこれらの光景を見たことがない中で、これほどの情景を表現されているのです。そして思い返せば、ドビュッシー自身も現地を訪れたことがなく、「印象」や「想像」をもとにこれらの曲を作ったのだとか。絵画の「印象派」がドビュッシーの音楽と深くリンクしているのは興味深いです。実際、印象派の絵画展のオーディオガイドでは、よく彼の音楽がBGMとして流れていますが、それも納得の組み合わせですね。
「塔」の曲に関しては、ドビュッシーはアジアを訪れた経験がないにもかかわらず、音階やリズムを巧みに解釈し、東洋的な雰囲気を創り出したそうです。確かに私の中にある“アジアの音”や“リズムの印象”を感じ取ることができ、どこかエキゾチックな雰囲気が漂っていました。
「グラナダの夕べ」こちらも想像の中でスペインの夕暮れやグラナダの情景を描き、「スペイン風の音楽」として表現されています。今度は、情熱的なフラメンコのリズムです。明らかにアジアのリズムと違い、途中から急に視界が広がり、ロマンチックな夕暮れの景色を脳内で旅しました。
「雨の庭」は、音楽の流れを通して雨が降り注ぐ様子や庭の生命力に満ちた情景が、想像豊かに描かれているといいます。辻井さんの繊細なピアノタッチはまるで雨音そのものを奏でているかのようで、その音色に包まれるひとときは本当に素晴らしい体験となりました。
こんなのはじめて!予期せぬハプニング!
世界を脳内で旅したあとは、プロコフィエフ:《ピアノ・ソナタ第7番 戦争ソナタ》へ。
プロコフィエフが戦時中に書いたこの作品は、時代の「不安」「怒り」「悲しみ」「希望」を強烈に描いています。第1楽章は、破壊的で荒々しいエネルギーがほとばしり、不安と緊張感が渦巻くような演奏でした。狂気じみた音階が次々と押し寄せ、不協和音の連続が空間を支配します。一音一音に辻井さんの魂が込められ、その圧倒的な迫力にただ息をのむばかり。まさに「ものすごいものを見た」と思わざるを得ない瞬間でした。
しかし、第一楽章が終わったその直後、辻井さんがピアノからぱっと手を放すと、なんと次の瞬間に立ち上がり、聴衆に語りだしたのです。
「気合が入りすぎてしまったようで、弦が切れてしまいました。ピアノ調律師さんに直していただく必要があります。」と、穏やかな笑顔でご挨拶。
「えっ!?そんなことあるの?」と、突然のハプニングに観客席はざわめき、ちょっとした興奮と期待感が生まれました。(笑) 辻井さんが舞台袖に戻ると、調律師さんが登場し、多分15分ほどかけてピアノの弦を交換する様子を観客みんなで見守ることに。
これまで10年近くピアノコンサートに通っていますが、こんな光景は初めてです。興味が湧いたので、思わずChatGPTに「ピアノの弦が切れる原因」について聞いてみました。
私:
プロコフィエフ:《ピアノ・ソナタ第7番》第一楽章で、ピアノの弦が切れました。辻井さんが、『気合い入りすぎて』と言って笑いました。ピアノリサイタルで弦が切れたのは初めてみました。どんな要因で弦は切れるの?
ChatGPT:
ピアノリサイタルで弦が切れるというのは非常に珍しい出来事ですが、それほど強烈なエネルギーと集中力で演奏された証拠ですね!辻井伸行さんの「気合いが入りすぎて」という言葉が、その場の緊張感を和ませてくれたのでしょう。
ピアノの弦が切れる要因
ピアノの弦が切れるのには、いくつかの主な要因があります:
強い打鍵と音のエネルギー
ピアノの弦は非常に張力が高い状態にあります。プロコフィエフの《戦争ソナタ》第1楽章のような、打鍵の強さや鋭さが求められる楽曲では、ピアニストが鍵盤を強く叩くことで弦に瞬間的な衝撃が加わり、切れてしまうことがあります。
特に現代音楽や戦時中の作品は、リズムが激しく、力強いフォルテやスタッカートが多いため、物理的な負荷が高くなります。
弦の経年劣化や金属疲労
ピアノの弦は長期間使用されると、金属が劣化し、疲労が蓄積します。弾力性が失われ、突然の衝撃に耐えきれなくなることがあります。
高音域や低音域の弦は特に切れやすい傾向があります。
気温や湿度の変化
ピアノは温度や湿度の影響を受けやすい楽器です。湿度が高いと弦に張力がかかりやすく、乾燥しすぎると弦が脆くなることもあります。
ホール内の環境が予想外に変化すると、弦の状態が不安定になることも要因の一つです。
高難易度の曲と演奏者のエネルギー
ピアニストが持つ強烈な集中力や精神力は、音に直接的な影響を与えます。特に辻井さんのように音楽と一体化した演奏では、表現のエネルギーが鍵盤を通じて弦に伝わり、通常の範囲を超える力が加わることがあります。
プロコフィエフは、強烈なリズムと推進力を重視し、この曲に「戦争の混沌」「人間の精神の抵抗と勝利」を表現しました。
辻井さんの演奏では、弦が切れたというハプニングを乗り越えたことで、さらなる集中力と勢いが生まれ、聴衆にとっても忘れられない瞬間となったはずです。
ちなみに以下の演奏を聞くと、この曲がどれだけすごいエネルギーかを感じ取っていただけると思います!
さて、調律師さんが修理を終え、なぜか私たちは拍手でお見送りしました。(笑)辻井さんがまた、入ってこられました。続きの第二楽章へ! 続く。
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