Day 6-1 シェーンブルン宮殿・世界で一番美しいカフェ:美術史美術館へ。

 5日目の夜、デュルンスタイン城跡のプチ登山を終え、私たちはついにヴィエナ(ウィーン)に到着しました。今回のホテルは、初めて部屋に電気ポットが置いてありました。電気ポットは都市を象徴するものなのだと実感しました。それにしても相変わらず天井が高い!母が2.3人分くらいありそうですね。

 ホテルロビー階にあるシンプルモダンなインテリアのレストランでの夕食。スープ、ビーフのマッシュルームソース添え、ブルーベリーがトッピングしてあるパンナコッタのようなデザートを頂いたあと、添乗員さんと翌日の自由時間について相談する時間がありました。


 私が行こうと思っているところは、映画『Before Sunrise』のロケ地である「カフェ・シュペール」。添乗員さんはそこには行ったことがないようでしたが、名前に聞き覚えのある様子。ヴィエナの中心部から、トラムで行かれる場所であることがわかりました。

 添乗員さんはまた、美術史美術館のカフェでランチをすることをオプションとして、ツアーの全員に提案しました。あまりにも熱く語られているので、みんなで参加することに決定しました。

 翌朝、この旅行で一番の混雑を経験したモーニングブッフェでした。日本人の姿は見られませんでしたが、多くのヨーロピアンがにぎわっていて、それまでのチェスキークルムロフやバートイシュルの観光地での優雅な朝食タイムとはまるで異なる、目まぐるしい雰囲気の朝食レストランでした。これまでの静かな朝食タイムとは対照的な、この都市特有の活気に満ちた朝は、まもなく現実に戻ることを反映しているかのようでした。

 午前中、ツアーに組み込まれている「シェーンブルン宮殿」へ。「美しい泉」という意味を持つ言葉だそうです。ここはマリア・テレジアやフランツヨーゼフ1世、そしてマリーアントワネットやエリザベートなど、歴史上の重要人物たちが過ごした場所で、その重厚な歴史を感じることができる特別な場所です。

 バスから降りると、シェーンブルン宮殿へと続く道沿いにスーベニアショップが1軒ありました。特に目を引いたのは、サンリオのキティーちゃんのように愛らしくグッズ化されたエリザベート(Sisi)のアイテムたち。その可愛らしさに思わず手に取ってしまいたい衝動に駆られましたが、ツアーのスケジュールがあるため、そのまま進んでいきました。

 そして、バロック様式の素晴らしい門をくぐると、シェーンブルン宮殿がまるで蜃気楼のように私たちの前に現れました。その壮大さと美しさに圧倒されながら、私はこの歴史ある宮殿が語る物語を肌で感じ始めていました。

 シェーンブルン宮殿の建設は17世紀に始まり、特にマリア・テレジア帝后の治世(1740-1780)に大規模な改装が行われました。また、オーストリア=ハンガリー帝国のハプスブルク家の夏の居城として使用されていました。

 宮殿は豪華なバロック様式で建てられており、幅およそ180m、奥行き55m、クリーム色に彩られたバロック様式の美しい外観。部屋の数は1400以上、調理場は139。最盛期には1000人以上の使用人が住んでいたといわれています。

  広大な庭園には、美しく手入れされた花壇、迷路、彫像があります。また、世界的に有名な「グロリエッテ」という展望台もあります。敷地内には世界最古の動物園であるシェーンブルン動物園があり、多種多様な動物を見ることができます。ここは、1996年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。

 今回のガイドさんは、ウィーンに住んで30年の日本人女性のベテランガイドです。まるでディズニーランドのジャングルクルーズの船長のように、私たちの笑うツボを正確に把握しており、とてもエンターティナーなガイドさんで話に引き込まれ、そのユーモアに満ちた案内は、よき旅の思い出にもなりました。

 特に、マリアテレジアの家族たちが、オペラ鑑賞をしている絵についての解説です。その絵の後方には6歳のモーツアルトが描かれているのですが、実はこんな裏話が。

 「実は、この絵には小さな秘密があるんですよ。このモーツアルトは、後で描かれたものなんです。だから、その代わり誰かが消されているのです」とおっしゃいました。誰かが消されているところで、爆笑。ところで歴史の中では、絵画の中の人物が後から追加されたり、消されたりすることは珍しくなかったようです。

 シェンブルン宮殿の中は撮影ができないので、ChatGPTが生成したシェンブルン宮殿内部のインテリアを掲載します。先に掲載したエリザベートと宮殿の絵もChatGPTが生成したものです。

 特に印象的なのは、マリア・テレジアは16人の子供を持つ母であり、そのうちの一人が後のフランス王妃マリー・アントワネットです。シェーンブルン宮殿では、この大家族の日常生活や、子供たちの教育に対するマリア・テレジアのこだわりなどが感じられました。

 そんなマリー・アントワネットは、フランス王ルイ16世と結婚しますが、なかなか子供ができなかったようです。そこで、マリー・アントワネットの兄である神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世が助言したというエピソードがあります。その後、マリー・アントワネットは数人の子供をもうけたそうです。

 6歳のモーツァルトがシェーンブルン宮殿で演奏を行った際、マリア・テレジア帝后に非常に気に入られたと言われています。若き天才モーツァルトが宮殿での演奏を通じて、その才能を広く認められるようになった瞬間です。そして、宮殿の床で滑ってころんだモーツァルトを抱き起してくれた皇女マリー・アントワネットに、「ありがとう。大きくなったら結婚してあげる」と言ったという伝説も、このとき誕生しています。

 先日、1984年の映画『アマデウス』を見たとき、スクリーン上のモーツァルトは全く異なる人物に思えました。彼の音楽の背後にある苦悩、孤独、そして自己破壊の傾向は、映画を通じて初めて理解したように思います。映画の中の彼は、天才でありながらも人間的な弱さを抱えていたのです。そんなモーツァルトのメロディーは時を超え、私たちの心に今も生き続けているのです。

 マリア・テレジアの子供であるマリー・アントワネットが住んでいたヴェルサイユ宮殿は、2回訪れたことがありますが。私としては、ここシェーンブルン宮殿の印象が強く残った気がします。モーツァルトの音楽が空間を満たしたその中で、その歴史的な背景を想像しながらその場所に立っている感動は、私にとって非常に特別なものになったのかもしれません。

 エリザベート(通称Sisi)もまたシェーンブルン宮殿の居住者となりました。彼女は1854年にオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と結婚し、オーストリア-ハンガリー帝国の皇后となりました。エリザベートはその美貌、知性、そして独立心強い精神で知られています。また、伝統的な王室の生活に馴染めず、しばしば王宮の厳格な規則に抗していました。彼女は個人的な自由を非常に重んじ、詩を書いたり、広範な旅行を行ったりしていました。このような彼女の生き方は、多くの人々にとって自由への憧れや、個人主義の象徴として映りました。エリザベートの悲劇的な死(1898年に暗殺された)は、彼女の伝説をさらに強固なものにしました。今日、オーストリアでは彼女の人生と遺産が、映画、文学、音楽、美術を通じて称えられています。彼女の人生は、美しさと悲劇、そして自由への渇望というテーマを通じて、多くの人々に影響を与え続けています。

 そんな二人のパワフルな女性の物語に心を動かされ、シェーンブルン宮殿の壮大な姿が一層鮮明に私の心に刻まれました。実際に足を踏み入れ、空気を感じ、その場のエネルギーを肌で感じることは、旅行の最高の喜びです。この一瞬一瞬が、どのように未来の私を形作り、私の物語に色を加えていくのでしょうか?


 そんな感動的な余韻を持ちながら、ツアーに組み込まれた予定はすべて終了。ヴィエナの中心であるオペラ座付近でバスを下車し、バスの旅は終わりです。やはり自分でチケットを買って、自分の足で街を散策する方が好きですが、母もいますし、添乗員さんが熱く推す美術史美術館へ行くことにしました。

 現地ガイドさんが、一緒にトラムのチケットを買ってくださるということで、地下鉄の方へ降りていきました。4回以上トラムに乗車するなら、24時間チケットがお得ということです。日本なら1日乗車券を使う際には何度も改札を通る必要がありますが、ここでは単にチケットに刻印を押すだけ。しかし、この簡便さには罠があり、刻印を忘れた場合、突然の抜き打ちチェックで厳しい罰金が科されるそうです。

 しかし、切符を日本のように何度も出さなくてはいけないと思いこんでいた70代たちは、切符をどこのポケットにしまっておくか? 入念なチェックをしていました。(笑)

 ヴィエナのお店がひしめく通りを歩きながら、美術史美術館へと向かいます。

 個性的なお花が並ぶお花屋さん。モーツアルトが結婚式を挙げたシュテファン大聖堂が見えた辺りを曲がり、まもなく美術史美術館へ。

 ツアーでないので、チケットは各自購入。65歳以上のシニアチケットもありました。入口を入ると、あまりにも繊細で洗練されたバロック様式の建築に、これは添乗員さんが熱くオススメしたことを一瞬で理解しました。

 中央のアーチになっているところの壁のあたりにクリムトの絵があります。

 こちらが、世界で一番美しいカフェと称されるれるカフェです。

 上から下をのぞくとこんな感じになっていました。さぞかし大混雑だろうと思っていたのですが、たまたま団体席が開いており、割とすんなりと14名で座ることができました!

 やはりお米系が食べたくなり、ポルチーニのリゾットを美味しくいただきました! ただただ優雅な気持ちを味わいながら、カフェでの至福の時を満喫しました。

 そのあと、ハプスブルク家が収集した芸術品の広大なコレクションで知られている美術展へ。ルネサンスとバロックの名作が多く、ブリューゲル、レンブラント、ルーベンス、フェルメールなどの作品が展示されていました。

ブリューゲル『バベルの塔』はこちらで鑑賞できます!

母とお友達になった方たち。

 美術史美術館のあと、どうしますか?ということになり、クリムトの「接吻」が観られるベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館へ行くことになりました。ここで自由行動がかなり分かれて、私と母も含む7名が添乗員さんに案内してもらうことになりました。ほかには、ウィーン・ホテル インペリアルでディナーを予約しているご夫婦もいらしたそうです!

 ようやくトラムに乗ることになりました。頻繁にトラムもやってくるようで、何番のトラムに乗るか、どちらの方向か?を確認しておけば、その番号に乗るだけ。古いトラムもあるので、いちいち停留所を確認しないといけないですね。トラムは結構混雑していましたが、無事に降りることができました。しかし、1つ前の停留所で添乗員さんは降りてしまったと言っていました。(笑)

ヴェルヴェデーレ宮オーストリア絵画館へ 続く…。