辻井伸行さんの(久石譲&坂本龍一)に癒されたのち、空前絶後の超絶技巧。

 サントリーホールで繰り広げられたARKクラシックスのスペシャルコンサート【公演2】辻井伸行&セルゲイ・ナカリャコフ(トランペット)​に足を運びました。たった一時間という昼下がりのコンサートでありながら、その内容は極めて濃密で、まるで二時間を過ごしたかのような錯覚に陥りました。

 前半に登場したのは、辻井伸行さんによるソロピアノ。久石譲さんと坂本龍一さんの楽曲が選ばれ、通常のクラシックコンサートとは一線を画すプログラムでした。辻井さんの最初の一音が、サントリーホールの神聖な空間に響き渡り、極上の癒しの時間が幕を開けました。辻井伸行さんのクリスタルな輝きのように響き渡る音色、その微細で優美な音が空間に広がり、心を温かく包み込む瞬間に、いつも深く感動します。YouTubeで同じ曲を視聴できても、やはりコンサートホールの大きな空間の中、癒しの二大巨匠のような、久石譲さんと坂本龍一さんの曲を辻井伸行さんが演奏するなんて、最高級の音に包み込まれる体験は得も言われぬ感動です。


 その後、いつもの明るい笑顔で登場した辻井さんが、360度の観客に対して何度も全力でお辞儀をされました、その瞬間に心が温かくなります。今回は通常のタキシードとは一味違い、黒のスーツにチャコールグレーのネクタイを配したエレガントな装いが新鮮に感じました。たった30分ちょっとだったと思いますが、時間の経過がゆっくりで、不思議な時間間隔に陥りました。


 そして、グランドピアノが動かされて、新たな音楽の章が始まりました。セルゲイ・ナカリャコフ(トランペット)とARKクラシックスのオーケストラです。

 「空前絶後の超絶技巧」と謳われる「トランペット小協奏曲《不条理》」が開演。

 冒頭から疾風の如く吹き抜けるバイオリンの旋律が耳を捉え、バイオリンに目が釘付けに。そして、トランペット奏者は、いつ息を吸っているのかさえも分からないほどの長いフレーズで楽器を吹き続け、首元の筋肉に今度は目が釘付けに。(笑)

 音楽とは思えないほどの不思議な響きが広がる。都市の喧騒や静寂を音で表現したかのような、捉え所のない現代アート。弦楽器、金管楽器ともに伝統的な役割からは外れ、まるでまるで都市の音を表現したような、交通渋滞のような音の流れを作り出していました。

 楽器がパーカッションとして機能しているようでもありました。そのため、楽譜がどのようになっているのか、興味が湧いてきました。さらに驚いたのは、電子音も組み込まれており、パソコンを操作する人物まで加わっていたのです。

 そして特に注目したのは、パーカッションと木琴を手がける奏者です。その人は一人で6役を演じ、木琴に至っては二本を持ち、四つの異なる音を同時に生み出していました。その速度は目を見張るものがありました。辻井伸行さんの先の癒しとは対照的に、まさに異次元の音楽体験となりました。これが1時間なの?と。クラシックコンサートの相対性理論を感じました。(笑)

 そして、外に出ると人だかりが見え、『主よ人の望みの喜びよ』が聴こえてきました。なんと辻井伸行さんが、10分だけのライブコンサートを開かれていたのです! 嬉しい! 以下撮影しました。

 今日も素敵な演奏をありがとうございました。ランチがまだだったので、サントリーホール前のレストランへ入りました。

 アーティスティックなビジュアルとダイバーシティな(?)触感や味覚が織りなす感覚のシンフォニーが重なり合い、至福のランチタイムとなりました。母、ごちそうさまでした。(笑)