映画『TAR』鑑賞。謎が解けてすっきり。

 ケイト・ブランシェッド主演の映画で、指揮者の話という情報だけで、映画館へ行ってきました。スリルもあり最高でした。ケイト・ブランシェットが、相変わらずの怪演で、実在の人物にしか見えなかったですね。アカデミー賞、主演女優賞が『Everything Everywhere…』のミッシェル・ヨーにいってしまいましたが、私は、ケイト推しです。

 世界の有名な賞を総なめした、指揮者のマエストロという設定で、舞台でインタビューされているシーンからはじまります。いや、いきなり映画の最後に流れるクレジットから始まりました。そしてインタビューシーンへ。映画にしてはやたら長いインタビューシーンであり、その尺8分。そのインタビューの中で、ケイト演じるターは、何度も「Time」という言葉を口にしました。指揮者ってそんなに「時間」と関係するのでしょうか? 

 ターはレズビアンで、女性のパートナーと子供がいました。ケイト・ブランシェット、またレズビアンの役?!これほど、中性的でカッコイイ、宝塚男役的な女優さんは、ケイトしかいないですからね。(笑) 

 ベルリンでオーケストラも率いており、学校でも指揮について教えています。ある男子学生が、バッハが好きではないと言ったら、ターは自分の知っているバッハについて、その生徒に語り、追い詰めていくのです。サイコパスか?! 長いシーンでやたらと迫力がありました。私も練習している「平均律クラヴィーア」をケイトが弾いていました。子供の頃、ピアノをやっていたそうで、いつか再開したいと実際のところ思っていたようです!

 あとから「TIME」について解説しているレビューを見て、かなり納得しました。これ以上詳しいのはないくらい素晴らしいレビューでしたのでリンクを掲載しておきます。

 劇中でターが指揮を執るのは、「マーラーの巨人」です。たまたま春に佐渡裕さんが指揮する「マーラー」をサントリーホールで聴いたばかりでした。この曲ほど激しい指揮振りをみたことがないです。ケイト・ブランシェットの指揮の演技も、リアルの指揮者のようで、迫力満点の上、なぜかスリリングでした。

 そしてまた、別の解説動画で明らかになったのですが、映画『ベニスに死す』も、マーラの巨人だったとのこと。あの映画も老人が美少年に恋をする同性愛でしたよね。わーそんなつながりがあったのか?! 

 そして最近、英語のレビューも日本語字幕を付けて視聴できるようになったので、観てみたところ、いろいろ判明して興奮気味です。(笑) ターは、精神を落ち着ける薬を常用しているし、幻覚や幻聴が聴こえたりするシーンがいろいろとあったので、精神疾患なのかな?と思っていたのですが、そういうことだったのか!と。

  有楽町のTOHOシネマ、スクリーン1で観たのですが、映画の内容だけでなく、シーンの背景の中にいろいろとメッセージとして読み取れるものがたくさんあって、158分の映画のようですが、全く飽きるところがありませんでした。事件も起きるので、推理小説のようでもあり、ドキュメンタリーのようでもありました。

 ひとりの人間が、成功から転落を経験し、またRebornしていく再生の物語でもあります。ある意味、権力者でもある彼女を取り巻く、30代、20代の女性たち、SNSでリークされるところなども、TIME(時代)を象徴しており、私もこのターにどちらかというと、年齢が近いのですが、人は、過去の栄光を一度捨てて。また新しい形で再生していくものなのだなと、学ぶところもありました。

 ケイト・ブランシェットの演技が、とにかく素晴らしいです。男性指揮者にするかどうかというアイデアだったそうですが、監督がケイト・ブランシェットを主人公にして、創作したあたり、今の時代にぴったりというか、男でもない女でもないカリスマを演じられるのは、ケイトしかいないと私も思いました。

 そういえば、最初にエンドロールが流れる理由は、映画の最後に流れる曲にも関連しているようです。

 面白い映画だなとは思いましたが、このブログを書くまで、内容を全く理解できていなかったことに気づいて、愕然としました。(笑)しかし、いろいろなレビューを観て、ようやく消化できました。すっきりです! あ、お化けも出るようですので、是非劇場スクリーンでチェックしてみてくださいね。(笑)