映画『コンパートメント No.6』鑑賞。

『イニシェリン島の精霊』の流れで、『コンパートメント No.6』のレビューをしているYouTubeを見つけ、映画プロデューサーのおじさまが大絶賛していたので、観に行くことに。しかし、近隣では新宿のシネマカリテしか上映されていませんでした。行ってみると、満席。次の会も満席の様子で、大注目の映画のようです。というのもカンヌ映画祭グランプリ受賞した映画だからです。


 舞台は、モスクワ。今だったら絶対に撮影できなかったでしょうから、かなり貴重な映像ですよね。時代は90年代の設定なので、携帯もSNSもない時代。カセットを持っていたり、ビデオカメラを抱えていたり、90年代のヒットソングも流れていたりして、ラブストーリーは、世界最北端の駅、ムルマンスクへ向かう寝台列車の中で繰り広げられるのです。

 モスクワに留学中のフィンランド人ラウラは、古代のペトログリフを見に行く旅へ。本当は女性の恋人?!と一緒に行く予定だったのですが、ドタキャンでひとり旅になってしまうのです。それでたまたま乗った寝台列車の相席は、スキンヘッドのこわもてのロシア人のリョーハ。だんだんと二人のディスタンスが近づいていくのは、もうわかっていますが、リョーハ、やるじゃん!みたいな感じで、爽やかなラブストーリーになっています。フィンランド語とロシア語というのもいいですよね。

 

 列車からはじまるラブストーリーと言えば、『ビフォーサンライズ』がありますが、あちらはヨーロピアンで、二人がインテリでオシャレすぎるので、憧れみたいなものを感じてしまいます。一方こちらのトレインラブストーリーは、北極圏の二人の不器用なところが、心くすぐられるんですよね。リョーハがあることをきっかけに、彼女を守ろうとする愛が芽生えた瞬間、泣けました。しかし、不器用な二人だから、またこじらせるのですが、そこからのクライマックス、また泣けました。

 旅の途中で出逢いは、それっきりになることも多いですが、たった1日の出会いが、今でも特別な記憶として心に残るものですよね。そのあとの二人は、どうなるのか? SNSもない時代ですし、もう会うことはないかもしれませんが、それでも一生、彼女と彼の心の中に残り続けるのかと思うと、本当に素敵な旅ができてよかったねと、おばさんは拍手を送りたいです。(笑)好きな映画でした。