映画『エール』(2015) 鑑賞。

 『CODA』の元ネタである『エール』をアマゾンプライムで鑑賞。『CODA』を観てから、エールを観る人の方が多いらしく、比較の感想がいろいろとありました。『エール』はフランス映画で、『CODA』はアメリカ映画となっており、リメイク版のほうが、輪郭をさらにはっきり、くっきりさせたものだそうで、完成度が高いようですが、『エール』ですでに涙腺崩壊しました。(笑) 

 父・母・娘・弟の4人家族の中で、高校生の娘以外は全員耳が聴こえないという一家の中、その娘が、コーラス部の顧問に歌の才能を見出される。しかし、誰も彼女の歌声を聴いたことがないし、通訳者として家族を支えていた娘だけに、ここを離れていってもらっては困るのだ。娘も家族の支えになっている自分の立場を理解し、夢に向かって行くことに葛藤する、というお話です。

 フランス映画ということもあり、インテリアもファッションも明るくて、手話での会話に感情が乗っていて、ものすごく陽気な雰囲気ですし、耳が聞こえないから、フライパンや食器をあつかうときの音の加減もわからず、常に家の中は、どんちゃん騒ぎに。また、普通の家族よりも、言いたいことはすべて手話を通して訳されていくので、オープンすぎる、ユーモラスな感じで描かれているところが、『最強のふたり』的な、フランス映画っぽさもあって、とてもよかったです。

 家族の中で唯一の健常者であり、外とのコミュニケーションは、すべて娘がいないと成り立たないので、娘は自分の声よりも、人の声を伝えていることが多いんですね。そんな中、コーラス部の顧問に歌の才能を見出され、全体の前で発声練習をさせられるのですが、彼女もそんな大声出したことがなくて、思わずでた美しい声に、恥ずかしくなって、ホールから出ていってしまうシーンが、最初のグッとくるポイントでした。

 「ほとんどの人は、自分の本当の声を知らない」と、ボイトレの先生が、かつて名言を言っていました。普段の生活で、極限まで大声を出すことがないと思うのです。しかしボイトレのレッスンのときは、マイクもない状態で防音室のなかで叫べる。どれだけ普段自分が小さな声で話しているか? に気づく瞬間です。

 「自分がこんな声を持っていたんだ」と気づいたあとの自転車での家までの帰り道のシーンがとてもいいなと思いました。

 とはいえ、どうやって「歌の才能」を家族に気づかせるのでしょうか? 是非映画をご覧ください!最後のシーンは、誰もが泣けるでしょう。こんな素晴らしい映画なのに、『CODA』の方がもっとすごいらしいのです…。予告編でもう泣いてしまいました。